ノベルレビューオンリー

ライトノベルレビューメインのブログ

フィッシュストーリー

 

フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

 

 伊坂幸太郎さんによる、全4編の短編(中編?)集。

 伊坂作品はこれが初めてなのですが、他の作品にも登場するキャラクターが多いとのことで、彼ら彼女らの物語が紡がれていきます。

 

 伊坂幸太郎、という作家名は有名作家として認識していたのでどのような作品を描く人なのか興味深かったのですが……今作の4つには今ひとつピンと来るものはなかったのが正直なところでした。2編目の閉鎖的な村を舞台にしたサクリファイスはなかなか面白く読めましたが、後はあまり響いてこない感じでしたかね。

 文体自体は地の文でダラダラ説明が続くようなこともないので読みやすいものがありましたし、後味悪い展開もないので読んで後悔することは全くなかったのですが、他の伊坂作品に手を出してみようと思わせてくれるまでには至らず、というのが最終的な個人的評価であります。 

フィッシュストーリー [DVD]

フィッシュストーリー [DVD]

 

 

ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 1-6巻

 

 

 アニメ化もされた「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」のスピンオフタイトル。本編でも重要なポジションを占める女剣士を主人公に、彼女の抱える事情とその所属するファミリアの面々と共にダンジョン攻略を目指す様を描いております。

 

 うん、本編同様、バトル描写の盛り上がりっぷりは本当に巧みなものがあります、まあ同じ作者さんなので当店ってば当然ですが。旺盛な執筆スピードも評価したいところです、2つのシリーズを結構な短期間に発売してますからね。

 ただ本編の主人公の少年に比べるとこちらの女剣士は感情表現が少なく、その分をファミリアメンバーが補っているとはいえメインキャラとしてはやや物足りないものも感じますね。とはいえ、本編ではページ割きすぎることになるので難しいであろうキャラの掘り下げがこちらで出来ているのは、シリーズ読んでる身としては楽しめてますけどもね。

 

 本編に引き続きこちらの作品もアニメ化されるとのこと、今後も本編同様追い掛けていくつもりです。

神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック

 

神曲奏界ポリフォニカ」の大迫純一さんが担当するシリーズ、通称「黒ポリ」の第1巻。作者の方は若くしてお亡くなりになったとのことで、訃報を聞いたときは驚いたものでした。

 

 主人公コンビは精霊警察の属しており、とある殺人事件の捜査のため現場に向かうのだが……と言った感じで始まる物語で。

 犯人が明示されてて主役たちがそれに迫る、といった形式になっており、「刑事コロンボ」などと同じと言えるでしょうか。
 ただこの形式を読みなれていないからか、どうもしっくり来る感じがなく、テキストは悪くないのですが読んでてあまり盛り上がりを感じなかったです。
 
 まあシリーズものでこれ以降手馴れて盛り上がっていくのでしょうけども、ちょっとこの巻だけだとあまり評価出来ないかな、といった所でした。

聖剣使いの禁呪詠唱 16巻

 

聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク> 16 (GA文庫)

聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク> 16 (GA文庫)

 

 ……もう16巻か、早いものだなあ。

 さておき、シリーズ16作目となる今回はロシアを舞台にして夏合宿を行うことになった主人公一行が、そこで強敵による策謀に巻き込まれていく様が描かれていきます。

 

前作までの拙レビュー↓ 

dragonmuga0093.hatenablog.com

 コメディーとシリアスそれぞれでなかなかに読ませてくれますし、チートハーレム物ならこのレベルまで描いてくれないとね、と思わせるバトル描写はさすがのものがあり、特にヒロインの一人が新たな剣技を習得する部分が良かったのですが。

 物語としては正直またこのテの繋ぎエピソードでマンネリ感が否めません。一応ラストで次巻以降大きく動きそうな感じでは描いてますが、と思ったら今度は短編集とのことですし、あまりもったいぶられてしまうと興ざめしてしまうので本筋を動かして欲しいなというのが正直なところです。

  あとはまあ、ラスボス候補は二人いますがどちらになるのかなあ、というのも興味深いので、そろそろに物語の核心に迫る展開が望まれます。

 

はたらく魔王さま! 0-16巻

 

はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)

はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)

 

 

 アニメ化もされた、和ヶ原聡司さんの、異世界から現代日本に転移してきた魔王がなぜか魔力を失って人間の若者となってしまい、一文無しの状態からアルバイトをして生計を立てつつ、追ってきた女性勇者やその仲間と対立、そして交流する様を描く作品となっております。

 アルバイトする大魔王、というイメージ的には出オチに近いものがあるわけですが、そこからのドタバタぶりはなかなか楽しめましたし、何より魔王と勇者の娘、という形で登場してきた赤子のような存在がとても可愛らしく、またイラストも実に良くてとてもお気に入りのキャラだったりしますが。

 物語中盤まで暗躍していたキャラが姿を現してからのヘイトっぷりがしつこいというか、読んでいてそこまでページ割かれても、と感じてしまい、物語の進行もどうもダラダラしているような印象でここ数巻は正直面白いと感じなくなってしまいました。アニメ化までされたので今でも人気作品ではあるのでしょうが、このままだと読者も離れていくのではないかと思ってしまいますが……

 

 ここまで付き合ってきたので多分最後まで読むとは思いますが、もっとメリハリのある展開を見せて欲しくありますし、それが改善されないときは読まなくなってしまうかも知れません。

風よ。竜に届いているか―小説ウィザードリィ 2

 

風よ。龍に届いているか―小説ウィザードリィ〈2〉

風よ。龍に届いているか―小説ウィザードリィ〈2〉

 

 コンピュータRPG「ウィザードリィ」の世界を舞台に、オリジナル要素も組み込みながら繰り広げられたファンタジー。
 連載されていたゲーム雑誌の愛読者でしたが、この物語ももちろん、目当ての一つでありました。

 いやあ、シビアで奥深いウィズワールドをこれ以上ないぐらい、描ききっていたこの作品、実に読み応えがありましたね。
 各キャラクター達の個性も十分に発揮されていましたし、戦闘シーンも迫力があり、ラストも実に見事にまとめてと、ゲーム小説としては最高レベルにあるのではないでしょうか。
 個人的には十二分に満足のいくものでしたね。

 一時期は入手困難であったようですが、復刊されたようですね。
 普通におすすめ出来る作品ですが、特に原作ゲームを愛好しているなら一読の価値は間違いなくあるものと思います。

ミドリノツキ 上中下巻

 

 

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

 

 

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

 

 

ミドリノツキ〈下〉 (ソノラマ文庫)

ミドリノツキ〈下〉 (ソノラマ文庫)

 

「星虫」で大ファンとなった岩本隆雄さんの、星虫シリーズ以外で初の作品となった「ミドリノツキ」、今作もまた気持ちの良い物語を見せてくれました。

 現代社会に突如現れた万能の塔、そこから起こる大騒動に、ちょっと変わった高校生、尚顕は舞台の中心へと巻き込まれていく…といった物語はややもすると「おいおい…」と突込みどころ満載になってしまいますが、岩本さんの確かな筆力と構成力でスイスイと読ませてくれます。後から考えると若干ヘンに思う点もありましたが、読んでるときにはまるで気になりませんでしたね。

 キャラも尚顕を中心に個性がありながら魅力溢れる面々を描ききっており、特にピュンの特異なキャラクター性は目を見張るものがあり、しかも尚顕との絡みでおいしい場面を持っていく、ということで読者に大きく支持されたのではないでしょうか。
 主人公と冒険を共にする少女とのストーリーも、ボーイミーツガールの王道ですがとてもさわやかで、ラストの気持ち良さはかなりのものでした。
 岩本作品のカップルではこの二人が一番好きですね。

 現代のファンタジーを描かせたらこの方が当代で一番、と思っていますが、昨今はまたもや冬眠に入ったかの如く動向が聞こえてきません。また素敵な物語を紡いで欲しいものですが…… 

神曲奏界ポリフォニカ スパーティング・クリムゾン

 

 榊一郎さんが担当するポリフォニカシリーズ、通称「赤ポリ」の第3巻。
 今巻では主人公コンビが所属する事務所の制服決定のドタバタ、そして……と言った展開で。

 前半ドタバタ、後半は一転シリアスとなるのですが……この終わり方では今巻だけでどうこう言えない感じです、前後編な構成なので。

 しかしこの作品に限らず、ブギーポップシリーズ以降のライトノベルで数字の巻数表示がないものもしばしば見受けますが。どの巻のことだったか判別が難しいし面倒ですね、読み手側としては(今更ですが)正直止めて欲しいものです。

ドウルマスターズ 1巻

 

魔法科高校の劣等生」の佐島勤さんによる、ロボットバトル物。ライトノベルでは難しいであろうこのジャンル(他にはイコノクラスト!ぐらいしか読んだことない)を佐島さんがどう料理するのか気になり購入してみたのですが。

 

 う~ん、これは期待はずれでしたかね……いや、佐島さんの一種独特な文章表現などは劣等生でなれているつもりなのであまり気になりませんでしたが、バトルに面白さを感じませんでしたし、キャラたちも今巻は紹介&顔合わせレベルな感じで、会話にもあまり見るべきところはなかったですね……まあマユリ少尉のあれこれは苦笑しつつもそこそこ楽しめましたけど。

 

 次巻以降を購入するかどうかは考えるところです……面白くなってくるならば付き合っても良いのですが、さて。

神曲奏界ポリフォニカ ロマンティック・クリムゾン

 

 榊一郎さんが担当するポリフォニカシリーズ、通称「赤ポリ」の第2巻。
 今回は主人公コンビが前面に出る展開ではなく、初々しい一組の淡い恋模様が描かれます。

 読んでてなかなか楽しめました、この世界独特の壁によって結ばれるのが困難なカップルの行方、そして危機……結構な盛り上がりだったのではないでしょうか。
 クライマックスも実にいい感じでしたしね。

 ただまあ、榊さんの筆力・構成力はまだまだこれからと思うので、これ以降のタイトルに期待であります。

 

迷宮都市のアンティークショップ 1-3巻

 

 ……う~ん、残念。

「小説家になろう」サイトにて掲載されている、迷宮が存在する都市に店を構え、迷宮に存在するアイテムを鑑定する魔法道具屋の主人とそこを訪れる冒険者との交流を描いたシリーズで3巻まで発売となっており。

 個人的には「ウィザードリィ」以来、ゲームでのアイテム鑑定要素は好み(鑑定でレアアイテムと判明したときの喜びはかなりのものが)ですので、そこにその世界観でのウンチクをアイテム紹介という形で披露しているこの作品はなかなか楽しく読んでいたのですが。

 文庫版は3巻まででそれ以降は発刊しない、つまり打ち切りとのことで……セールスが振るわなかったということでしょうが、物語はまだまだ序章、これからダンジョン攻略が本格的に描かれるであろうタイミングなだけにねえ。

 まあキャラたちが大体出揃って、過去に起きたダンジョンでの大事件に主要キャラたちが関わって3巻で決着、ではあったので一区切りではありますが、イラストの絵柄も可愛らしくてもっと文庫で読みたかったですね。

 

 ライトノベエル業界もなかなかシビアになっていく一方だとは認識していましたが、このレベルでも5巻に届かないのか、と残念になってしまう感想となりました。他の出版社で引き取るとかないのかな……

“文学少女”と穢名の天使

 

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

 

 ライトノベル界の中で評判になっているシリーズということで手にとってみた、その第4巻。
文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 第四作となる今作では名作「オペラ座の怪人」をモチーフに、またもやシビアな展開を迎えるエピソードでありました。
 1巻ではホンのチョイ役だったツンデレなクラスメイトが今巻ではメインヒロインとなり、語り手の少年に対する本当の心情とその親友とのやり取りのウラにあるものが相当に重く、ラストまで読んでも爽快感は得られませんでした。
 
 次の巻ではいよいよ、語り手の少年に過去と現在に大きく影響してきた少女が出てくるようで……また相当にシビアな展開を見せることになるのでしょうね。

“文学少女”と繋がれた愚者

 

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

 

 ライトノベル界の中で評判になっているシリーズということで手にとってみた、その第3巻。
文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 

 今作では武者小路実篤の「友情」をモチーフに、シリーズで初めて主人公の同級生にまつわる重いエピソードを描いておりました。
 そして語り手の少年の過去にもようやくと言いますか、まだまださわり程度でしょうが触れることになりこの巻はまずまず読めたかなあ、と思っていたところにラストの1ページで驚愕させられました……いやあ、まさかこう繋がってくるとは、と正直2巻までのこのシリーズは期待外れと感じていたのですがそれを一気に吹き飛ばしてくれましたね。

 これからも読まないわけにはいかないな、と思わせてくれた、まさしくターニングポイントとなる一作でした。

宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する 1-5巻

 

「小説家になろう」サイトにて掲載されている人気タイトルの商業文庫化されたシリーズ。

 現実世界で宝くじで40億もの大金を当てた青年が異世界への扉を見つけ、その世界に様々な知識・品物などを持ち込んでその地域の暮らしを豊かにしていくさまを描いております。

 

 最初、2巻まで読んだときは読みやすい文章なのは良かったものの今一つ盛り上がりを感じずやや外れかと感じていたのですが、舞台がより大きくなり、人間模様にも動きが出てきた3巻ぐらいから俄然、面白くなってきました。

 あちこちに出かけてはその地の事情を改善、現代に戻って必要な物を仕入れてまた改善、となっていくのがなかなか楽しいですし、キャラたちも個性をしっかり描かれてきましたね。個人的にはカキ氷にハマりまくる領主夫人が微笑ましかったです。

 主人公以上にチートになってしまったヒロインは正直どうかと思え今後の展開に差支えがありそうな気がするのですが、そこをうまく使いこなせたらかなりの良作になりそうです。今後を楽しみに読んでいくつもりであります。

 

”文学少女”と飢え渇く幽霊

 

 ライトノベル界の中で評判になっているシリーズということで手にとってみた、その第2巻。
文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 第二作となる今作では英国文学の名作「嵐が丘」をモチーフに、前作同様、いや前作以上にシビアでシリアスな展開を見せ、後半の真相が明らかになっていくにつれそのエグさに驚かされました。

 

 前作のときのようなそれなりに爽やかな読後感も得られませんでしたし、文章力の確かさと”文学少女”のキャラの動かし方には作者の実力を認めるものの、この巻全体の印象はそんなに良いものはありませんでした。もう少し付き合って見るつもりですが、完結までは読まないことになりそうです。