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風よ。竜に届いているか―小説ウィザードリィ 2

 

風よ。龍に届いているか―小説ウィザードリィ〈2〉

風よ。龍に届いているか―小説ウィザードリィ〈2〉

 

 コンピュータRPG「ウィザードリィ」の世界を舞台に、オリジナル要素も組み込みながら繰り広げられたファンタジー。
 連載されていたゲーム雑誌の愛読者でしたが、この物語ももちろん、目当ての一つでありました。

 いやあ、シビアで奥深いウィズワールドをこれ以上ないぐらい、描ききっていたこの作品、実に読み応えがありましたね。
 各キャラクター達の個性も十分に発揮されていましたし、戦闘シーンも迫力があり、ラストも実に見事にまとめてと、ゲーム小説としては最高レベルにあるのではないでしょうか。
 個人的には十二分に満足のいくものでしたね。

 一時期は入手困難であったようですが、復刊されたようですね。
 普通におすすめ出来る作品ですが、特に原作ゲームを愛好しているなら一読の価値は間違いなくあるものと思います。

ミドリノツキ 上中下巻

 

 

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

 

 

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

ミドリノツキ (中) (ソノラマ文庫 (941))

 

 

ミドリノツキ〈下〉 (ソノラマ文庫)

ミドリノツキ〈下〉 (ソノラマ文庫)

 

「星虫」で大ファンとなった岩本隆雄さんの、星虫シリーズ以外で初の作品となった「ミドリノツキ」、今作もまた気持ちの良い物語を見せてくれました。

 現代社会に突如現れた万能の塔、そこから起こる大騒動に、ちょっと変わった高校生、尚顕は舞台の中心へと巻き込まれていく…といった物語はややもすると「おいおい…」と突込みどころ満載になってしまいますが、岩本さんの確かな筆力と構成力でスイスイと読ませてくれます。後から考えると若干ヘンに思う点もありましたが、読んでるときにはまるで気になりませんでしたね。

 キャラも尚顕を中心に個性がありながら魅力溢れる面々を描ききっており、特にピュンの特異なキャラクター性は目を見張るものがあり、しかも尚顕との絡みでおいしい場面を持っていく、ということで読者に大きく支持されたのではないでしょうか。
 主人公と冒険を共にする少女とのストーリーも、ボーイミーツガールの王道ですがとてもさわやかで、ラストの気持ち良さはかなりのものでした。
 岩本作品のカップルではこの二人が一番好きですね。

 現代のファンタジーを描かせたらこの方が当代で一番、と思っていますが、昨今はまたもや冬眠に入ったかの如く動向が聞こえてきません。また素敵な物語を紡いで欲しいものですが…… 

神曲奏界ポリフォニカ スパーティング・クリムゾン

 

 榊一郎さんが担当するポリフォニカシリーズ、通称「赤ポリ」の第3巻。
 今巻では主人公コンビが所属する事務所の制服決定のドタバタ、そして……と言った展開で。

 前半ドタバタ、後半は一転シリアスとなるのですが……この終わり方では今巻だけでどうこう言えない感じです、前後編な構成なので。

 しかしこの作品に限らず、ブギーポップシリーズ以降のライトノベルで数字の巻数表示がないものもしばしば見受けますが。どの巻のことだったか判別が難しいし面倒ですね、読み手側としては(今更ですが)正直止めて欲しいものです。

ドウルマスターズ 1巻

 

魔法科高校の劣等生」の佐島勤さんによる、ロボットバトル物。ライトノベルでは難しいであろうこのジャンル(他にはイコノクラスト!ぐらいしか読んだことない)を佐島さんがどう料理するのか気になり購入してみたのですが。

 

 う~ん、これは期待はずれでしたかね……いや、佐島さんの一種独特な文章表現などは劣等生でなれているつもりなのであまり気になりませんでしたが、バトルに面白さを感じませんでしたし、キャラたちも今巻は紹介&顔合わせレベルな感じで、会話にもあまり見るべきところはなかったですね……まあマユリ少尉のあれこれは苦笑しつつもそこそこ楽しめましたけど。

 

 次巻以降を購入するかどうかは考えるところです……面白くなってくるならば付き合っても良いのですが、さて。

神曲奏界ポリフォニカ ロマンティック・クリムゾン

 

 榊一郎さんが担当するポリフォニカシリーズ、通称「赤ポリ」の第2巻。
 今回は主人公コンビが前面に出る展開ではなく、初々しい一組の淡い恋模様が描かれます。

 読んでてなかなか楽しめました、この世界独特の壁によって結ばれるのが困難なカップルの行方、そして危機……結構な盛り上がりだったのではないでしょうか。
 クライマックスも実にいい感じでしたしね。

 ただまあ、榊さんの筆力・構成力はまだまだこれからと思うので、これ以降のタイトルに期待であります。

 

迷宮都市のアンティークショップ 1-3巻

 

 ……う~ん、残念。

「小説家になろう」サイトにて掲載されている、迷宮が存在する都市に店を構え、迷宮に存在するアイテムを鑑定する魔法道具屋の主人とそこを訪れる冒険者との交流を描いたシリーズで3巻まで発売となっており。

 個人的には「ウィザードリィ」以来、ゲームでのアイテム鑑定要素は好み(鑑定でレアアイテムと判明したときの喜びはかなりのものが)ですので、そこにその世界観でのウンチクをアイテム紹介という形で披露しているこの作品はなかなか楽しく読んでいたのですが。

 文庫版は3巻まででそれ以降は発刊しない、つまり打ち切りとのことで……セールスが振るわなかったということでしょうが、物語はまだまだ序章、これからダンジョン攻略が本格的に描かれるであろうタイミングなだけにねえ。

 まあキャラたちが大体出揃って、過去に起きたダンジョンでの大事件に主要キャラたちが関わって3巻で決着、ではあったので一区切りではありますが、イラストの絵柄も可愛らしくてもっと文庫で読みたかったですね。

 

 ライトノベエル業界もなかなかシビアになっていく一方だとは認識していましたが、このレベルでも5巻に届かないのか、と残念になってしまう感想となりました。他の出版社で引き取るとかないのかな……

“文学少女”と穢名の天使

 

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

 

 ライトノベル界の中で評判になっているシリーズということで手にとってみた、その第4巻。
文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 第四作となる今作では名作「オペラ座の怪人」をモチーフに、またもやシビアな展開を迎えるエピソードでありました。
 1巻ではホンのチョイ役だったツンデレなクラスメイトが今巻ではメインヒロインとなり、語り手の少年に対する本当の心情とその親友とのやり取りのウラにあるものが相当に重く、ラストまで読んでも爽快感は得られませんでした。
 
 次の巻ではいよいよ、語り手の少年に過去と現在に大きく影響してきた少女が出てくるようで……また相当にシビアな展開を見せることになるのでしょうね。

“文学少女”と繋がれた愚者

 

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

 

 ライトノベル界の中で評判になっているシリーズということで手にとってみた、その第3巻。
文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 

 今作では武者小路実篤の「友情」をモチーフに、シリーズで初めて主人公の同級生にまつわる重いエピソードを描いておりました。
 そして語り手の少年の過去にもようやくと言いますか、まだまださわり程度でしょうが触れることになりこの巻はまずまず読めたかなあ、と思っていたところにラストの1ページで驚愕させられました……いやあ、まさかこう繋がってくるとは、と正直2巻までのこのシリーズは期待外れと感じていたのですがそれを一気に吹き飛ばしてくれましたね。

 これからも読まないわけにはいかないな、と思わせてくれた、まさしくターニングポイントとなる一作でした。

宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する 1-5巻

 

「小説家になろう」サイトにて掲載されている人気タイトルの商業文庫化されたシリーズ。

 現実世界で宝くじで40億もの大金を当てた青年が異世界への扉を見つけ、その世界に様々な知識・品物などを持ち込んでその地域の暮らしを豊かにしていくさまを描いております。

 

 最初、2巻まで読んだときは読みやすい文章なのは良かったものの今一つ盛り上がりを感じずやや外れかと感じていたのですが、舞台がより大きくなり、人間模様にも動きが出てきた3巻ぐらいから俄然、面白くなってきました。

 あちこちに出かけてはその地の事情を改善、現代に戻って必要な物を仕入れてまた改善、となっていくのがなかなか楽しいですし、キャラたちも個性をしっかり描かれてきましたね。個人的にはカキ氷にハマりまくる領主夫人が微笑ましかったです。

 主人公以上にチートになってしまったヒロインは正直どうかと思え今後の展開に差支えがありそうな気がするのですが、そこをうまく使いこなせたらかなりの良作になりそうです。今後を楽しみに読んでいくつもりであります。

 

”文学少女”と飢え渇く幽霊

 

 ライトノベル界の中で評判になっているシリーズということで手にとってみた、その第2巻。
文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 第二作となる今作では英国文学の名作「嵐が丘」をモチーフに、前作同様、いや前作以上にシビアでシリアスな展開を見せ、後半の真相が明らかになっていくにつれそのエグさに驚かされました。

 

 前作のときのようなそれなりに爽やかな読後感も得られませんでしたし、文章力の確かさと”文学少女”のキャラの動かし方には作者の実力を認めるものの、この巻全体の印象はそんなに良いものはありませんでした。もう少し付き合って見るつもりですが、完結までは読まないことになりそうです。

異世界食堂 2巻

 

「小説家になろう」サイトにて連載されている異世界×料理モノを商業文庫化したシリーズの第2作。

 筆者は書店で偶然手にとった1巻の魅力にドハマリしてなろうサイト掲載分も全読するぐらい愛好するようになってしまった人間ですので、この巻も発売と同時に即購入したのでした。

前巻の拙レビューはこちら↓ 

dragonmuga0093.hatenablog.com

 今巻から本格的にウェイトレスとなるキャラが加わり、物語世界が更に広がっていきました。食堂スタッフだけで構成するエピソードも作れるようになりましたからね。

 相変わらずの巧み過ぎる料理描写には、飯テロと呼ばれるのも頷けるレベルでほんとに美味そうです。とん汁のエピソードを読んだあとは実際、どうしても食べたくなりとんかつ屋に行って定食とともに注文してしまいました、はい。

 異世界から扉を通って来店するファンタジーな客達の、それまでに出会ったことのない美味に驚きと喜びが入り交じる情景もまた、この作品の醍醐味ですね。今巻ではフェアリーたちの喜びの舞が印象的でした。

 

 ただ、大変面白く美味そうなのは確かなのですが、1巻に比べると若干、気になる部分がありました。「小説家になろう」サイトにて掲載されている原作に比べ、推敲されたのか各所に追加された文章・描写があるのですがそれが蛇足ではないかと感じる部分が正直、何箇所もありました。編集担当との協議でそうなったのかも知れませんが、個人的にはオリジナルままで良かったのではないかなあと思えてなりませんでしたね。その労力は文庫限定特別編を増やすなどに当てて欲しくあります。

 

 2巻が発売になった後、しばらく掲載がSTOPして心配でしたがようやく復活してくれて一安心でした。文庫版の方も3巻が出てくれると嬉しいです、特に個人的に大変気に入っているエピソードが載るはずですので楽しみなのですが、出来ればオリジナルに近いまま出してもらいたいですね、その方が作者の犬塚惇平さんの負担も軽いはずですし。

神曲奏界ポリフォニカ ウェイワード・クリムゾン

 

 榊一郎さんが新たにGA文庫にて手がけたシリーズ。

 キネマティックノベルというPCタイトルからの派生、ってことのようですね。


 読んでみますと、うん、まあ榊さんらしい物語のスタートの仕方かな。
 榊さんの中篇以上のシリーズではいつもスロースターターなので大きな盛り上がりって感じはしなかったですが、キャラと世界設定の紹介は十分にこなせてましたでしょうか。

 双子姉妹は今巻では顔見せ程度でしたね。まあ今後出番は増えてくるのでしょう。

 2016年現在ではライト文芸単行本として新たに展開されたようですね、そちらは未読ですが。 

“文学少女”と死にたがりの道化

 

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)

 

 ライトノベル界の中でなかなかに評価の高いシリーズということで手にとってみた、その第1巻。

文学少女”を自称する、物語を文字通り食べてしまう少女(?)と、数年前の出来事で心に傷を負い、今はただ平凡な日々を過ごすことを願う少年とが、文学作品をモチーフにした事件に巻き込まれそれを解決(?)に導く姿を描いていきます。

 

 第一作となる今作では太宰治の「人間失格」をモチーフに、ライトなキャラ造形に似合わぬシビアでシリアスな展開を見せていきまして。
 正直、「こんな重いのが評判になるの?」と疑問に思うほどでありました。
 まあそれでも”文学少女”のキャラ設定に救われてか、読後感は悪くはなかったですが……語り手の少年の後ろ向きさがどうにも気になって、トータルではそこそこぐらいかな、という印象でした。

 今後も読んでいくつもりではありますが、展開によっては最後までは追うことはないかも知れません。

異世界チート魔術師 5巻

 

異世界チート魔術師 5 (ヒーロー文庫)

異世界チート魔術師 5 (ヒーロー文庫)

 

「小説家になろう」サイト上にて掲載されている人気作品の商業文庫化第5作。

 4巻での小競り合いを受け、今巻では内戦、そして主人公の活躍による決着までを描いていて、相変わらずのチートっぷりに更に拍車がかかっておりました。しかしここまで強くなっても更に上回る力が敵にはあるということらしく、今後はそちらを軸に展開していくことになるのかな?

 拙レビュー↓

dragonmuga0093.hatenablog.com 

 相変わらず素晴らしいのはNardackさんのイラストで、この5巻の表紙は例え見知らぬタイトルの新刊だったとしても思わず手にとってしまったことでしょう。

 この巻では恋愛模様にも少し進展があり、二人の距離がようやく縮まってきました。まあこれは1巻の時点で明らかでしたがいずれ落ち着くところに落ち着くことでしょう。さすがにハーレム展開はこの作品だと似合わないですからね。

 

 で、この巻で大きくページを使っていた戦闘パートは、う~ん、主要各キャラに活躍どころがあったとは言えますが、あちこちに場面の移り変わりが激しくて落ち着かない印象を受けましたね。もう少しすっきりとした場面展開にしてくれた方が判りやすく読みやすかったと思いますし、その方が好ましかったです。まあ主人公無双ばかり描かれても飽きてしまいがちですので、アクセントを付けることも大切かとは理解出来るのですが、構成するにもう少し削ぎ落とした方がというのが率直なところでした。

 

 まだまだ続いていきそうな物語ですが、出来たらもう少し早く次の巻を読めたらな、と期待したいですね。

扉の外 全3巻

 

 ……う~ん、シャッキリしない。 

 土橋真二郎さんの描く、修学旅行中に何らかの事件に巻き込まれ閉鎖空間となった室内での、生徒たちの動向、駆け引き、集団心理等々を巧みに描く3作品となっております。

 3作それぞれ違う主人公となっていて、それぞれのクラスでの役割(一匹狼だったりクラスの中心だったり)も違いますが、共通しているのはそれぞれのクラスが状況の変化によって追い詰められ、いじめ・排斥といった負の感情に引っ張られていくところで、それを改めようとしたり逆に利用したりしながら脱出への道を探ることに。

 

 3冊を一気に読ませるぐらい、作者の土橋真二郎さんの筆力はなかなかのものがありましたし、イラストの白身魚さんの絵柄もなかなかに好みで、刻々と変化していくクラス内の感情の変化をきっちり描いている部分には感心したのですが。

 どの巻も結末がスッキリしない、カタルシスが感じられないオチで、読み終えて「う~ん……」と首を捻ってしまいました。あえてヒーローが出現する展開にしなかったのだろうとは思いますが、それを補うようなインパクトもないとなると満足には程遠いものがありました。

 また3巻通して重要なポジションにいるキャラたちもまだナゾを残したままなのもしっくりこないものが……特に3巻のほぼラストで苦境に陥ったまま放置、ってキャラはどうにもならないのか、と思ってしまいましたね。

 

 もう一冊、シリーズ完結編となるタイトルが出ればまた違った評価になるのですが恐らくは打ち切りということなのでしょうし、「惜しいなあ」というのが最終的な感想ですね。