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ジハード 全11巻

 

ジハード (JUMP j BOOKS) 全11巻完結セット (JUMP)

ジハード (JUMP j BOOKS) 全11巻完結セット (JUMP)

 

 十字軍の時代を舞台にしたライトノベル
 最初の2巻ぐらいまでは田中芳樹作品の影響が色濃く、面白いけどオリジナリティに関してはどうかなあ、と思っていたんですが、キャラがガンガン動いていくうちに全く独自の作品になっていきました。
 特に女性キャラの魅力に関しては圧倒的にこちらが上でしたしね。
 まあ主人公が用兵家として傑出しているが普段の生活はダメ男、ってのは銀英伝のヤンを連想させますが、その落差に関してはこちらの方が大きかったですね。

 ただ終盤の4巻は、最後を飾るにふさわしい盛り上がりっぷり、というまでには残念ながら到らなかった、という印象でした。
 シャラザードの使い方もしっくりきませんし、蒼き狼との対決に重点を置かれても、一巻からのライバルである獅子心王もいるんだしピンと来ないというのが正直な所でした。
 結局生かしきってないキャラ(ロビンやウィルフレッド)もいてもったいなかったし、伏線放り投げも随所に見られるし(ヴァレリーが過去に肉親を殺したって設定はどうなった?)、何かもったいない終わり方をしてしまったような気がしました。
 ヴァレリー・ラスカリス・エルシード・ルイセを中心にわいのわいのやっていた前半の楽しさが薄れてしまったのも、戦争を描く以上は生死が絡んでくるのはやむを得ないにせよ、いきなりな感が強かったこともあり残念に思いましたね。

 ですが歴史を舞台にした群像物としては割合面白かったのは確かですし、筆力もデビュー作であることを考慮すれば十分でありました。
 良いキャラを産み出せるのですから、あとはそれらを存分に動かせる構成力があればな、というのが最終的な印象ですね。